10年間1校も新設せず 障害者教育に冷たい県
愛知県が障害者に冷たく特別支援学校を新設しないため、県内の知的障害特別支援学校は全国一マンモス校弘化しています。「教室が足りない」深刻な事態を追いました。
適正規模超え
県内に知的障害特別支援学校は17校(国立1校、県立12校、名古屋市立4校)あり、約4500人が学んでいます。
文部科学省は特別支援学校の適正規模を小中高等部合わせて生徒数200人以内としていますが、愛知県では県立12校のうち7校が適正規模を超えています(今年5月1日現在)。県内で一番多い(全国1位)のは豊川養護学校(512人、86学級)です。次いで一宮東養護学校(483人、83学級)、半田養護学校(451人の、78学級)と続きます。全国10位内に県内に5校も入っています。
県内4番目に生徒が多い春日台(はるひだい)養護学校(生徒数432人、74学級)を柳沢けさみ衆院6区予定候補、もとむら伸子参院選挙区予定候補とともに訪ねました。
校舎ボロボロ
教室が足りないため、視聴覚室も理科室も美術室も作業訓練室も、普通教室に転用していました。運動用具や楽器などの教材は廊下に山積み。食堂の一部を教室に改修したため、昼食時に生徒全員が入れません。調理員が給食を高等部の教室まで運んでいました。
施設の老朽化も深刻です。教室の壁や廊下はボロボロ。県の予算削減で改修費が出ないため職員が壁のペンキ塗りや床のタイル貼りをしています。
祖父江元宏校長は「特別教室をカーテンやついたてで仕切って教室にしたため隣の教師や生徒の声が聞こえ、生徒が落ち着いて学習に集中できない」と話します。教職員は187人いて、職員会議は、マイクを使っているといいます。
生徒数が全国1の豊川養護学校は東三河地域唯一の養護学校です。渥美半島や奥三河の山間部などスクールバスの出発地まで父母が車で送迎するなど、2時間以上かけて通学する生徒もいます。障害を持つ生徒にとって長時間の乗車は大変です。
スクールバスの不足も深刻です。尾張部の養護学校では5台のスクールバス(定員55人)を250人が利用。介助の添乗職員も乗るため、2人用席に3人が座り、補助席も利用し大変窮屈です。
生徒が急増した要因について、県の担当者は、義務教育の小中等部で父母が「子どもに合った教育を受けさせたい」との要望が多くなったことをあげ、中等部卒業生の就職難や専門教育を受けるため高等部への進学者が増加したことを指摘します。
県立校がマンモス校になっていても、愛知県はこの10年間、特別支援学校を1校も新設していません。
県の障害者教育予算(2010年度)も、生徒1人あたり経費582万円、5年前より66万円減らしています。全国平均(788万円)より200万円も少なく、47都道府県の中で45番目の低さです。
愛知県障害者(児)の生活と権利を守る連絡協議会(愛障協)の上田孝副会長は「県は、財政が厳しいからといって予算を削減するのではなく、『障害者の教育を受ける』権利を保証すべきです。国は十分な教育が出来る施設・設備、教員配置を定めた障害者学校設置基準を策定すべきです。新築・増築の補助金を増額し、高等部の単独校も含めた地域密着型の養護学校を大幅に増設すべきです」と話しています。
【特別支援学校】
2007年度から学校教育法が改定され、盲学校、聾(ろう)学校、養護学校(知的障害養護学校、肢体不自由養護学校の2種)は特別支援学校に転換しました。県内に特別支援学校は32校(国立1、県立26、名古屋市立4、豊田市立1校)あり、盲・聾・肢体障害養護学校の生徒数は横ばいです。(5月27日)