映像DVD化
愛知県の青年が「被爆体験聞き撮りプロジェクト」(愛称ききプロ)を立ち上げ、被爆者の証言を映像記録としてDVDに残す取り組みをしています。
「ききプロ」は2008年6月に発足しました。原水爆禁止世界大会に参加した青年たちが「被爆者から体験を直接聞ける最後の世代。核兵器をなくし平和な未来を創るため、核兵器の恐ろしさと平和の大切さを後世に伝えよう」としたものです。愛称には「聴くプロ」になろうという意気込みと、被爆体験を聴けなくなる日が近づいているという「危機感」をもって取り組もうという思いが込められています。
被爆者からの「聞き撮り」は、これまで名古屋市、豊橋市など10カ所で聞き取りを行い、30人の体験談を記録しました。
江南市での「聞き撮り」には8人の青年が参加し、青年らは被爆者の送迎、司会進行、テープ録音、ビデオ撮影などを分担しました。 この日は犬山市に住む石村勝さん(77)と江南市、岩倉市に住むの被爆者から体験を聞きました。
石村さんは8月6日の原爆投下時は広島市外にいましたが、1週間後に父親の安否確認のため入市し被爆しました。「1週間たっても原爆ドーム横を流れる太田川に遺体が浮かんでいた」などと当時の状況を話しました。
参加した青年から「原爆による影響はどうか。原爆症に認定されているのですか」「家族や友人は被爆者と知っていますか」と質問します。石村さんは「がんや脳梗塞を患った。原爆症認定を申請したが最初は却下。2回目に申請が通り昨年4月に認定された」と述べ、「被爆者は戦争の被害者。事実だから隠すことはない。核兵器をなくすため堂々と話している」ときっぱりと言いました。
叫び記録して
記録係でビデオ撮影していた多田尚記(なおき)さん(33)は「学生の時に国民平和大行進で県内を歩いてから運動にかかわっています。被爆者の『二度と自分たちのような被爆者を出さないで』の悲痛な叫びを記録して多くの若者に伝えたい」と語ります。男子学生(2年)は「昨年の長崎での原水爆禁止世界大会に参加し、被爆者の発言を聞き感動しました。自分で出来ることはないかと、ききプロに参加した」と話しました。
愛知県原水爆被災者の会(愛友会)の水野秋恵さん(70)は「県内に約2千人の被爆者がいます。多くの人の記録ができるよう協力したい」と話しました。
「聞き撮り」は引き続き実施し、メンバーも募集しています。今年8月の原水爆禁止世界大会までに英語の字幕付きのDVDを完成させ、海外代表に贈る計画です。県内の青年団体にもDVDの活用をよびかけます。
「ききプロ」を立ち上げた責任者の小酒井仁さん(30)は話します。「最初は県平和委員会の会員数人の取り組みでしたが、最近は会員でない青年も含め毎回10人前後が参加しています。参加者をいっそう広げ、若い世代に、67年たった今も原爆症に苦しむ被爆者の声を伝えたい」
連絡先=愛知県平和委員会青年学生部052(931)0070(3月23日)