国の誤った隔離政策で苦しめられてきたハンセン病元患者の名誉回復や医療支援体制の整備を、国と自治体に義務づけた「ハンセン病問題基本法」が今年4月施行されました。これを受けて、元患者たちは公営住宅の即時提供や、安心して受けられる医療機関の実現を求めて運動しています。
社会復帰した元患者や支援者でつくる東海地区退所者原告団連絡会(さくらの会)は、9月3日、医療支援の具体化について愛知県と懇談しました。
「会」が要請した今回の内容は、県内で年2回行われている医療相談会を医療施設内で行うこと、専門医療体制が充実している国立駿河療養所(静岡県御殿場)で治療を希望する人に対し往復交通費を援助するーなどです。
交渉には代表の平野昭さん(77)=静岡県沼津市在住=ら2人の元患者と支援者が参加。せこゆき子日本共産党愛知県委員会副委員長も同席しました。
今もハンセン病の後遺症に苦しんでいる平野さんは、「相談会に行っても、医療施設ではないため、治療してもらえず、薬をもらえない。地域で安心して医療を受けられるようになれば、社会復帰しようという人がもっと増えるはず」と述べ、基本法にもとづく改善を強く求めました。
県側は、「県の相談窓口で医療機関を紹介している」「他の難病患者対策が遅れている現状では、ハンセン病だけを特別扱いして交通費を援助するのは困難」などと回答。また、ハンセン病や関連疾患にかかわる医療費について、ハンセン病療養所では無料となるものの、一般医療機関では自己負担が発生すると説明しました。
せこ氏は、「愛知県は全国で最も激しく患者を差別・強制隔離した歴史を持ち、偏見や差別の根は深い。いまだに家族に元患者であることを言えない人がたくさんいます。個人の希望に応じてどこでも治療が受けられるよう支援すべきです」と迫りました。
県側は、「県単独で交通費を出すのは難しいので、国に要望を出したい。医療相談会の場所については、国立長寿医療センター(大府市)の活用も検討したい」と回答しました。
参加者は、県作成の啓発用のパンフレットの改善も要請しました。