昨年秋の金融危機ではじまった大不況のもとで、愛知県では全国最悪の雇用破壊がおこなわれ、「子どもの貧困」がますます深刻化しています。
深刻化する「子どもの貧困」
――親が解雇され、家賃が払えず、親子ともにホームレスになった。
――国民健康保険料を払いきれずに保険証を取り上げられ、子どもが“無保険”状態になっている。
――義務教育の小中学校で、経済的理由による不登校がでている。
――私立でも公立でも授業料未納の高校生が増え、生活困窮による中途退学が増えている。授業料未納を理由に卒業式で卒業証書をわたさない県立高校があった。
――夜間高校では学校給食がその日唯一のまともな食事という生徒がいる。
マスメディアも報道しているこのような「子どもの貧困」の深刻さと重大さに、子育て中の方も、そうでない方も、多くのみなさんが心を痛めておられるのではないでしょうか。
「子どもの貧困」は子どもの自己責任ではありません。にもかかわらず、親の生活困窮によって、子どもたちの衣食住、医療、教育など当り前の権利が奪われています。そして、広がった「貧困と格差」が固定化し、「貧困の世襲」「貧困の世代間連鎖」が心配されています。
日本国憲法や日本政府が認めている「子どもの権利条約」に定められている子どもの生存権や教育権などの権利があまりにもないがしろにされています。
日本共産党は、貧困から子どもを救う取り組みは、憲法と「子どもの権利条約」を生かし、子どもの権利を確立する意義をもっていると考えます。
問われる政治の責任
OECD(経済協力開発機構)の統計によると、日本は先進国で唯一、社会保障や税による「所得再配分」がおこなわれた後で、子どもの貧困率が悪化しています。
自公政権の「構造改革」による相次ぐ庶民増税や社会保障切り捨てによって所得再配分機能がこわされ、貧困と格差拡大がひどくなったからです。
「子どもの貧困」問題は、大きく見れば政治責任の問題です。政治を変えることが、問題解決のカギの一つであることはまちがいありません。
愛知県内では、児童福祉や教育関係をはじめ多分野の皆さんが「子どもの貧困」解消の運動をすすめています。
自治体では「子どもの権利条約」をふまえた「子ども条例」を制定する動きも広がっています。
日本共産党の取り組み
日本共産党は国会や地方議会で、子どもの豊かな成長を保障する政治をめざして活動しています。
志位和夫委員長は2007年2月の衆議院予算委員会の質問で、国会史上はじめてまとまった形で「子どもの貧困」問題を取りあげました。首相の認識を問い、児童扶養手当の削減や生活保護の母子加算の廃止をやめるよう迫り、最低賃金の引き上げを求めました。
今年2月、石井郁子衆議院議員の質問に、官房長官は「家庭の経済状況によって修学の機会が奪われるということは何としても避けなきゃいかん」と答弁しました。
佐々木憲昭衆議院議員は3月25日の衆議院で、児童扶養手当を父子家庭にも支給するよう求め、担当大臣は前向きの答弁をおこないました。
愛知県の日本共産党地方議員団は、妊産婦無料健診、子ども医療費無料制度、児童扶養手当、保育・学童保育、小中学生の就学援助費、高校授業料補助、「子ども条例」制定など、子どもにたいする自治体の医療・福祉・教育・環境などの改善と拡充に取り組み、それらの子育て支援策を前進させてきました。
「子どもの貧困」をなくすための日本共産党の政策提案
「子どもの貧困」の背景には、親の雇用・労働条件、社会保障、児童の福祉、医療、教育など多分野にわたる問題があり、自公政権の「構造改革」路線や高学費政策など、貧困と格差拡大をつくり出す構造があります。ここにメスを入れずに、一回限りの手当のバラマキでは解決の見通しはつきません。
日本共産党は、「子どもの貧困」をなくし、子どもも親も安心して暮らせる愛知をつくるために、次の政策を提案します。
深刻化する「子どもの貧困」を解決するため、政府が専門家会議を設置し、実態調査をふまえて総合的で抜本的な対策をとることが求められています。自治体では、「次世代育成行動計画」に「子どもの貧困」克服をきちんと位置づけることが必要です。
日本共産党は、国と地方自治体で次の緊急政策に取り組みます。
子どもの医療を保障します
市町村の子ども医療費無料制度は入院・通院とも中学卒業まで無料にします。国の制度としても、当面、就学前まで無料化し、地方の子ども医療費無料化の拡大を支援します。
国民健康保険料滞納世帯の子どもへの短期保険証の交付が法で決められましたが、いまだに届いていない子どもがいます。すべての子どもが保険証で医療機関にかかれるようにします。
保育・児童福祉を充実します
保育料を引き下げます。保育園を増やし、待機児童をなくします。児童養護施設などを充実し、児童相談所の体制を強化します。
ひとり親家庭への支援を強化します
児童扶養手当の改悪を撤回させ、この4月から廃止された生活保護の母子加算を復活します。父子家庭にも児童扶養手当を支給します。
教育費の保護者負担を軽減します
義務教育は無償が原則です。小・中学校の学用品、交通費、修学旅行費などを支給する就学援助制度を広げます。学校給食費の値上げに反対し、無料化をめざします。
学童保育所を増設し、利用料を引き下げ、父母負担を軽減します。
高校・大学生活を支援します
高校の入学金・学費滞納を理由にした処分や除籍をやめさせます。公立高校の授業料減免や私立高校授業料補助を拡充し、返す必要のない奨学金をつくります。
高校交通費補助制度を創設します。高校生救済の緊急貸し付け(無保証人・無利子・返済猶予付)をつくります。
大学についても国公立の授業料免除を広げ、私立の授業料負担を減らす直接助成制度をつくります。奨学金制度の抜本的改善も必要です。高校、大学の無償化はめざすべき方向です。
外国籍の子どもを支援します
愛知県は外国人労働者の多い県です。景気悪化のもと、公立学校にも外国人学校にも行けない外国人の児童・生徒の増加が心配されています。不就学の最大理由は「学校に行くお金がないから」です。外国籍の児童・生徒が就学・進学できるよう支援を強めます。
保護者の生活安定のために
正規社員とパートなど非正規社員との均等待遇、派遣労働者の権利保護、最低賃金の引き上げで、ワーキングプアー(働く貧困層)を解消します。中小企業にたいし、それらの措置が実施できるよう支援します。
子どもが幸せになれる日本と愛知を
日本の子どもの養育費や学費の調達は親の自己責任にされています。親の収入がなくなれば、子どもの生活も困窮する構造になっています。
フランスの子ども関連予算は日本の4倍です。フィンランドでは、国から母親全員にベビー服や絵本などがぎっしりつまった箱が届けられ、17歳までは全員に月1万3千円程度が支給され、専門学校や大学をふくめ教育は無償です。学生は月々数万円の返済不要の奨学金がもらえます。
日本は、従来の外需依存の経済政策がゆきづまり、戦後最悪の不況にありますが、それでも「世界第2の経済大国」です。愛知県はオーストリア1国に匹敵する大きな経済規模をもっています。
日本の予算の使い方を変えれば、ヨーロッパ諸国にように子ども関連予算を増やすことは十分に可能です。
みなさん。
力を合わせて、憲法と「子どもの権利条約」を生かし、どの子も安心して育つことができる日本と愛知をつくろうではありませんか。