【参考資料】07年度愛知県予算案の問題点について
2007年2月27日 日本共産党愛知県政策委員会
1、国の社会保障改悪・国民負担増路線に追随し、暮らし・福祉の独自施策の切り捨て、縮小がいっそう深刻になっています。
予算案では県の新規授業として97事業75億余円が盛りこまれていますが、県民の福祉のかかわる新規事業として18事業33億余円が盛り込まれました。しかし、この中で、県独自の事業は7事業だけ、あとは国の新規事業、制度変更にともなって行われるものにすぎません。特に、障害者にかかわる事業はすべて国の事業にかかわるものでした。介護、医療、年金、障害者制度など度重なる、社会保障の連続改悪と負担増に県民の怒りは強まっています。先の県知事選でも県民の要求の第一は、健康・福祉の施策でした。この願いにこたえることこそ、地方自治体が県民に負っている責任です。
しかし、予算案は福祉・くらしの予算を次々に削っています。昨年度比較して減額された主なものだけでも、民間社会福祉施設運営費補助金(約4億6千万円減)、在宅障害者相談事業(約3千万円減)、心身障害者小規模授産施設運営費補助金(約7千万円減)、心身障害者コロニー費(約6億9千万円減)、遺児手当(約2億1千万円減)などがあります。選挙公約で強調した、子どもの医療費の無料化や少人数学級の拡大は来年度以降に後回し、精神障害者の医療費の無料化は検討中とのことで実現するかどうかも危ぶまれています。
県民生活が厳しい中、介護や医療、国民健康保険税(料)、保育料へ軽減策は一刻の猶予もなりませんが、民間保育所運営費補助金(約6千万円減)、介護サービスの利用者の負担軽減を図る、低所得者利用者負担軽減費補助金(約6千万円減)、障害者の利用者負担を独自に軽減した社会法人に助成する、社会福祉法人減免事業補助金(約1億3千万円減 制度の廃止)、増加した医療費等について市町村や国保組合に補助する、国民健康保険事業費補助金(約7千万円減)など逆行する予算案となっています。特に、非正雇用の労働者の増大など不安定な雇用によって、国民健康保険事業への加入者は増加し、生活困窮による滞納者は増加していますが、神田県政前の98年度との比較では、補助額は10分の1(加入1世帯あたり2694円から293円)に切り縮められています。まさに、「福祉の心」を忘れた神田県政の姿を端的に示しています。
また、高校の授業料値上げ(月額9600円から9900円に)など県としての新たな負担増とともに、県民への福祉・くらしの施策の担い手の職員も「あいち行革大綱2005」に基づき、703人(内、県立三大学の地方独立行政法人化による移管が412人)の県職員の削減が提案されました。警察官は国の指示のもと118人増員され、この7年間で約1700人の増員となっています。教職員も386人増員されましたが、99年度以来それぞれの年度の単純合計でも約3000人の県職員が削減され、雇用相談や労働相談の手が足りないなど県民への福祉・くらしの施策の遂行に大きな困難が生じています。
1、今までと同様、大企業奉仕の開発推進の予算案には変わりがありません。
昨年に続き、高度先端産業立地促進補助金6億7827万余円が三菱重工、富士重工、オムロンの大企業3社に投じられます。これまでの企業誘致推進事業(666万余円)、外国誘致促進事業(753万余円)、外資系企業進出支援補助金(500万円)に加えて、産業立地展開推進事業(1752万余円)、地域振興産業立地調査(876万円)、次世代ロボット産業振興事業(1130万余円)、ナノテクセンター(仮称)整備費補助(1億4470万円)が新規事業として盛り込まれ、大企業の開発研究を援助する科学技術交流センターの基本設計に約5600万円が予算化されました。とくに、トヨタ自動車のテスココース建設のために、造成調査として14億3440万余円(外に債務負担行為として3億1千万円)を予算化していることは重大です。その一方で、愛知経済の主役である中小企業への支援予算である商工業振興予算は昨年度までの8年間で400億円も削減されましたが、予算案ではさらに1億円余が削減されました。
また、道路整備には1051億余円を計上しています。第2東名、名古屋環状2号線、名古屋高速道路など高速道路・自動車専用道路の整備が中心です。全国的な港湾整備に呼応し、トヨタ自動車をはじめとした輸送機器の搬出入に利するため、三河湾にガントリークレーン増設に6億1400万円が盛り込まれました。将来の水需要低下が必至な中、2月県議会にも水道事業の1日最大給水量を174万立方メートル(これまでの77%余)に下方修正することを提案していながら、設楽ダム(約1552万円)の建設を推進します。「名古屋ルートセントタワー」「モード学園スパイラルタワーズ」「山崎マザック」など大企業ビルなどへの補助金(優良建築物等整備事業費補助、都市再生推進事業費補助)や市街地開発へ補助金に約11億円の予算が投じられます。
全体として投資的経費が圧縮される中で、大企業奉仕ではない学校の耐震改修や県営住宅の建設など「生活密着型」の公共事業が大きく切り捨てられています。
1、国による地域社会への攻撃に対して何ら手立てをとらず、市町村の上からの押しつけ合併、道州制導入促進など地方自治破壊をすすめる予算となっています。
愛知県の医師不足は深刻であり、県が昨年6月に、県内の348病院対象に行なったアンケート調査でも、三分の一近い116病院が医師不足と答えています。公立病院の休日・夜間の救急外来の中止など診療科の閉鎖や夜間診療の縮小・休止などが相次いでいます。この根本には、国の医療費抑制政策がありますが、愛知県は抜本的な対策をうっていません。06年度から医師確保対策として「ドクターバンク」をはじめましたが、採用実績がないなど十分機能できているとはいえません。にもかかわらず、医師確保対策事業は06年度予算とほぼ同額の2798万余円にすぎません。逆に、国、県主導による押しつけ合併によって、住民のくらし・福祉の施策が後退し、多くの住民の怒りが高まっていますが、県は地方自治破壊をすすめる市町村合併や道州制推進に約13億円を予算化しています。
1、安心・安全を強調してはいても、県民の平和を脅かす予算が盛り込まれていることです。愛知県は航空自衛隊・C130H輸送機などイラク派兵の拠点地域になっており、新たに空中給油機KC767が配備されようとしています。防衛庁の防衛省への変更に伴って、名古屋飛行場(県営名古屋空港)の条例改正が提案されたことをはじめ、大規模災害時において重篤患者を被災していない都道府県に搬送する施設が小牧基地に整備(広域搬送拠点臨時医療施設設備整備費 863万余円)され、新たに小牧基地に整備された機動衛生隊との関連が問題となることをはじめ、NBC(N=核、B=生物剤、C=化学剤)災害及びテロの発生を前提とした医療機器の整備費(特殊災害対策設備整備費補助金 3222万余円)や国民保護対策推進費(1042万余円)が盛り込まれ、「戦争する国」に対応した愛知県としての具体化が予算化されていることは問題です。