07年度愛知県予算案について
2007年2月27日 日本共産党愛知県常任委員会
1、2007年度予算案が2月21日に公表されました。一般会計は2兆2450億円と前年度比101・4%の増額予算となっています。歳入として、県税収入を1兆3116億円(前年度比2070億円増)と過去最高の収入を見込んでいますが、企業減税の仕組みはそのままにした景気依存型の不安定な税収構造であり、法人2税はピーク時(90年度)の95%程度です。しかも個人県民税の増額分の6割の約80億円が定率減税全廃による新たな県民負担増によるものです。
今回の予算案は、神田県知事の選挙公約が盛り込まれた準骨格予算、事実上の本格予算となっています。その本質は、三期目となる神田知事と自民・公明与党による「ポスト万博」の県政方向が示されたものであり、2010年を目標とした国際イベントの誘致・開催をテコに、中部財界が重視する産業社会基盤(インフラ)の建設を促進しようとするものです。自民党県議団は選挙直後にインフラ整備を要求し、マスコミも「インフラ整備に使う投資的経費を06年度比5・3%減と絞り込む予定だったが、こうした声を受け、3・3%減まで減少幅を圧縮させた」(「朝日」2月22日付)と報道しています。神田知事の選挙公約は、この間の県民犠牲、大企業奉仕、大型開発優先の県政の継続を示した「新しい政策の指針」を土台にしたものです。その基本方向を盛り込んだ予算案は、住民のくらし・福祉を切り捨てる国の施策に追随し、県民の福祉・くらしを守るという自治体の本来の役割を放棄して、中部財界の意向にそって大型開発の促進と大企業奉仕をすすめるという貧困化と格差拡大の予算案、「福祉の心」を忘れた予算案になっています。
同時に、予算案には、日本共産党や革新県政の会をはじめとした県民の運動の中で、切実な県民要求を一定反映するものが盛り込まれています。具体的にみると、非木造住宅への耐震診断費や改修費補助の拡充、メンタルヘルスの相談窓口の設置、スクールカウンセラーの小学校への配置、特定不妊治療費助成の拡充など県民の願いを実現する施策が盛り込まれたことは重要な成果です。しかし、国の施策にもとづいたものや制度の対象を拡充しても予算は同じ、窓口を設置する保健所自体の統廃合など、問題は残されており、県民の願いを生かす内容に充実するためにも、県民運動の今後の発展と日本共産党の県議会での論戦が不可欠となっています。
1、07年度予算案の問題の第一は、国の社会保障改悪・国民負担増路線に追随し、暮らし・福祉の独自施策の切り捨て、縮小がいっそう深刻になっていることです。県立高校の授業料値上げ(月額9600円から9900円に)など県としての新たな負担増とともに、民間保育所運営費補助金(約6千万円減)や国民健康保険事業費補助金(約7千万円減)など福祉施策の予算が大幅に削減されています。
第二は、大企業奉仕の開発推進の予算案には変わりがないことです。昨年に続き、高度先端産業立地促進補助金が大企業3社に投じられ、「名古屋ルートセントタワー」「モード学園スパイラルタワーズ」「山崎マザック」など大企業ビルなどへの補助金や市街地開発へ補助金が投じられるとともに、トヨタ自動車のテストコース建設のために、造成調査として14億3440万余円を予算化していることは重大です。また、将来の水需要低下が必至な中、徳山ダム、設楽ダムの建設根拠としていた県の水道事業の1日最大給水量を174万立方メートル(これまでの77%余)に下方修正することを提案しておきながら、設楽ダム(約1552万円)の建設を推進しています。
その一方で、愛知経済の主役である中小企業への支援予算である商工業振興予算は昨年度までの8年間で400億円も削減されましたが、07年度予算案ではさらに1億円余が削減されました。全体として投資的経費が圧縮される中で、大企業奉仕ではない学校の耐震改修や県営住宅の建設など「生活密着型」の公共事業が大きく切り捨てられています。
第三は、国による地域社会への攻撃に対して何ら手立てをとらず、市町村の上からの押しつけ合併、道州制導入促進など地方自治破壊をすすめる予算となっていることです。愛知県の医師不足は深刻にもかかわらず、医師確保対策事業は06年度予算とほぼ同額にすぎません。逆に、県は地方自治破壊をすすめる市町村合併や道州制推進に約13億円を予算化しています。
第四は、安心・安全を強調してはいても、県民の平和を脅かす予算が盛り込まれていることです。愛知県は航空自衛隊・C130H輸送機などイラク派兵の拠点地域になっており、新たに空中給油機KC767が配備されようとしています。防衛庁の防衛省への変更に伴って、名古屋飛行場(県営名古屋空港)の条例改正が提案されたことをはじめ、NBC(N=核、B=生物剤、C=化学剤)災害及びテロの発生を前提とした医療機器の整備費や国民保護対策推進費が盛り込まれ、「戦争する国」に対応した愛知県としての具体化が予算化されていることは問題です。
1、06年度は法人2税の収入が予想を大幅に上回りましたが、財政状況の深刻さは改善できていません。07年度も減債基金などの基金からの400億円の繰り入れで帳尻あわせをしています。県債残高は277億円増加し、一般会計で3兆8653億円となっています。借金は予算規模の1・8倍にふくれあがり、利子払いだけで毎日1億8千万円が消えています。
県民の願いを生かす予算にするためには、大企業奉仕、大型開発優先の財政構造を改め、ムダを削るとともに、大企業に応分の負担を求め、くらし・社会保障を予算の中心にすえることが必要です。県民の福祉・くらしを優先する、「県民が主人公」の県政に流れを変えることができるのは安倍自公政権の悪政に断固として立ち向かい、「福祉の心」を県政に取り戻せと訴える日本共産党しかありません。また、行政と議会がゆ着し、大企業と結びついて、県民に悪政を押しつけようとしている時、県民の立場に立って議会のチェック機能を生かせるのは、企業・団体から1円の献金も、政党助成金ももらわず、県民と草の根から結びついて活動する日本共産党だけです。
県知事選で示された、県政を変えたいという県民の願いを生かすために、日本共産党は県議会議席の回復に全力をあげる決意です。