7月9日「愛知民報」
東海・東南海地震対策の強化が求められていますが、震災時の消火と被災者救済にあたる消防職員の人員不足が深刻です。小泉内閣が推し進める「行政改革推進」法で、消防職員などの公務員をさらに削減しようとしています。県内の状況を調査しました。
教訓にそむく
名古屋市では六月、中村区で発生した火災で消火活動中の消防士が殉職しました。この事故の背景には松原市政がすすめてきた「行革」リストラの影響が指摘されています。
阪神・淡路大震災を教訓に、救急隊の増設などで消防職員は1998年度に最高の2291人となりました。しかし2000年度以後は消防職員を減らし続け、05年度は阪神・淡路大震災時(2266人)を下回る2257人になりました。総務省消防庁が定めた「消防力の基準」は2000年に緩和されました。緩和された基準のもとでも消防職員は91・7%しかいません。
消火要員を削減
名古屋市は05年度、火災など災害現場に出動する消火要員を初めて、削減しました。消火要員は「消防力の基準」より実数で200人近くも不足しています。現場指揮官は12人も減らされました。
日本共産党の山口きよあき市議は6月市議会で「消防ポンプ車は1台5人乗務が基本。休暇などがあり5人で出動できない時がしばしばあると聞く。安心・安全の確保のため、指揮隊ををはじめとする消防体制の充実が必要」と市側に消防職員の増員を求めました。
充足率5割台も
中小都市はさらに深刻です。01年から05年の4年間で蒲郡市、犬山市、江南市では消防職員を減らし、充足率は60%台。西尾市や知多市では若干の増員はありますが充足率は50%台。基準を満たすには200人前後が必要です。
稲沢市は、消防ポンプ車、はしご車、救急車など設備の充足率は100%満たしています。しかしそれを動かす消防職員は「基準の63%です。稲沢東分署では、救急車が出動すると6人しか職員が残りません。火事が発生し、タンク車とポンプ車にそれぞれ3人づつ搭乗して出動すると、化学消防車もはしご車も人がいなくて出動できません。
日本共産党の安部勝士市議が「消防職員の増員は急務」と追及。市側は「非番や週休者を緊急招集して対応している」と答えました。
この非番中に緊急出勤した消防職員に市は超過勤務手当や夜間勤務手当を払っていませんでした。同市の消防職員は市を相手に、手当の支給を求め名古屋地方裁判所に提訴しています。
消防職員が減った自治体(数字は人数)
2001年 | 2005年 | |
名古屋市 | 2,355 | 2,257 |
蒲郡市 | 107 | 105 |
犬山市 | 76 | 75 |
江南市 | 114 | 107 |
隊長過労死
高齢化にともない救急車の出動回数は毎年増大しています。名古屋市の04年の出動回数は9万5000件を超え、10年間で4万件も増えています。名古屋市では消防職員全体が減少するなかでも救急隊員は01年300人から05年320人と増員しています。
この4年間で豊橋市9人、岡崎市12人、尾張旭市3人、岩倉市3人など多くの自治体で救急隊員を増やしていますが、出動回数増加に職員増加が追いつかない事態になっています。
出動回数増大で救急隊員の過労が問題になっています。名古屋市の救急隊員は「多い日は20回も出動し食事や休憩も満足にとれない」といいます。名古屋市では救急隊長の過労死も起きています。