6月4日「愛知民報」
放射性物質や有害な重金属を含む土壌埋め戻し材「フェロシルト」の撤去問題で、石原産業(本社大阪市)が5月21日、瀬戸市幡中町の埋立分について愛知県による撤去命令の取り消しを求め名古屋地裁に提訴しました。このような石原産業の開き直りの姿勢に関係住民から怒りの声があがっています。フェロシルト問題に取り組んできた日本共産党の議員に、これまでの運動や今後の課題などについて聞きました。
県内の主なフェロシルト埋設地の撤去状況
埋設場所 | 埋設量(単位・トン) | 撤去状況 |
瀬戸市北丘町 | 82,000 |
作業途中 |
幡中町 | 137,000 |
作業途中 |
広之田 | 2,200 |
撤去完了 |
長久手町前熊 | 約40,000 |
6月上旬完了 |
尾張旭市城山 |
100 |
撤去完了 |
日進市折戸 | 3,000 |
撤去完了 |
豊田市深見など | 33,400 |
6月上旬完了 |
たらいまわし反対 水野すみ子瀬戸市議
瀬戸市北部を流れる蛇ヶ洞川の上流に「ケナフの栽培」と偽ってフェロシルトの埋立が始まった3年前に現地調査したのがフェロシルト問題に取り組んだ最初です。
住民のみなさんとともに市や県に訴えましたが、当初は動きませんでした。フェロシルトが埋設された三重県や岐阜県の日本共産党議員団と連携し、実態解明と早期撤去の運動をすすめてきました。
これまで判明したフェロシルトの埋設量は全国最大の幡中町の13万7千トンをはじめ、瀬戸市内の5ヵ所に埋められたフェロシルトは22万3600トンで、全国の埋設量の約3割を占めています。
このうち北丘町では大半が残っています。新聞報道では石原産業は北丘町のフェロシルト撤去期限を11月末に延期する計画書を県に提出したとのことです。
幡中町では5月から撤去作業が始まったものの撤去はすすんでいません。撤去どころか石原産業は県の撤去命令の取り消しを求める訴訟をおこしました。理由は、撤去量が膨大で期限に間に合わない、粉塵やダンプ輸送の2次公害が避けられない、封じ込めなど撤去に替わる方法で対処したい、などとしています。
愛知県と瀬戸市は、今のところ撤去の方針に変わりはないものの、同じ瀬戸市内の処分場に搬入することも視野に入れています。地元住民は石原産業に対して怒りの声を上げ、市内の産廃場への搬入に反対しています。
日本共産党瀬戸市議団は、議会質問でとりあげるとともに、市議会での撤去決議の採択に奮闘しました。また、日本共産党の市田忠義参院議員が国会でフェロシルト問題をとりあげました。不法投棄されたフェロシルトの完全撤去と被害地での「たらい回し」に反対し、今後ともとりくんでいきます。
ただちに現地調査 塚本美幸尾張旭市議
尾張旭市内では市の中心道路シンボルロード沿いの造成地5000平方メートルにフェロシルトが埋設されていました。この造成地は「山辺の散歩道」に隣接した市民のハイキングコースや散歩道として人気のある一帯です。
2003年に緑豊かな雑木林が突然伐採され、陶土を採掘したその跡に埋め戻しとしてフェロシルトが埋設されました。
日本共産党尾張旭市議団は昨年10月末、ただちに現地調査を行いました。現場に居合わせた石原産業代表取締役に対し、その場で造成地をブルーシートで覆うことや早期撤去等を口頭で申し入れしました。
石原産業が地域住民に工事日程を知らせる配布物に「フェロシルトは人体に悪影響は無いとの研究結果がある」との内容を載せたので、「専門家は放射線の危険があるといっている」と申し入れ、削除させました。
市に対しては、付近で井戸水を使用している所に水質検査の結果が出るまで使用を差し控えるよう周知を早急に行う等の申し入れを行いました。造成地は、市長の親族の所有地でしたので、市長に説明を求める声が市民から出ました。現在は「今後、水質浄化のために環境保全に力を入れて欲しい」との声が寄せられています。
5月13日に全量撤去され、修復作業が6月中旬完了の見通しで行われています。
撤去期限守れず 原田秀俊長久手町議
昨年10月に「問題になっているフェロシルトが長久手町にもある」との匿名の通報が町役場にあったのが発端です。場所は愛知万博長久手会場の西側にある前熊の土砂採取跡地です。
町役場の職員とともに私も現地に行きました。石原産業を現地に呼び確認させました。フェロシルト業者からの聞き取りなどで約1万3000トンの埋設と発表しました。土壌検査の結果、6価クロムが基準の12倍も検出されたことから、一刻も早い撤去を要求し、石原産業は今年2月末までの撤去完了を約束しました。
今年1月から撤去作業が始まりましたが、2月になって石原産業が「撤去完了期限を3月末までに延期したい」と表明。さらにボーリング調査で当初の3倍の約4万トンも埋設していることが判明し、撤去作業は大幅に遅れています。
地元住民は度重なる撤去期限の延期に石原産業への不信感を高めています。