5月21日「愛知民報」
小泉内閣・自公政権は「国際競争力強化」の名で、圧倒的多数の国民に負担増を押し付け、庶民犠牲の増税で税の所得再配分機能を弱め、一握りの大企業に富を集中する「格差拡大」路線をすすめています。これにたいし地方自治体は住民福祉の機関として住民の命と暮らしを守り格差拡大に歯止めをかける役割を果たすことが求められています。愛知県を検証してみました。
過去最高の借金
愛知万博は「経済効果7兆7000億円」(日本国際博覧会協会)といわれます。博覧会協会の運営費は予想を上回る収入で黒字になりました。それを支えたのが会場建設費や交通基盤整備費の大半が自治体や国の借金でまかなわれました。
「『元気』舞台裏は財政難」(「中日新聞」)と報道されたように、万博・空港関連事業に巨額投資した愛知県の「万博後遺症」は深刻です。
一般会計の県債残高は2005度末で過去最高の約3兆8000億円。06年の一般会計予算(約2兆2000億円)の1・7倍にふくれあがり、利子払いだけで毎日約2億円が消えています。県が発表した財政中期試算によれば県債残高は増え続け2010年には4兆330億円に達する見込みです。
92年に2828億円あった財政調整基金は05年わずか5000万円に落ち込み、無理を承知の「県債活用」と減債基金からの借り入れで、収支の帳尻をようやく合わせています。
万博後遺症
愛知県と5市町が51・85%(37億円)を出資している第三セクターの愛知高速交通株式会社が運営する東部丘陵線(リニモ)は万博閉幕後、利用者が激減しています。万博後の目標乗客数1日3万1500人に対して実績は毎日1万数千人。昼間の車内はガラガラです。県と同社は沿線の大学生を中心に乗客増をはかろうとしていますが、採算が取れるか危ぶまれています。廃線に至った新交通システム「桃花台線」(ピーチライナー)と同様に経営危機が現実化してきています。
愛知万博との相乗効果で、開港ブームにわいた中部国際空港。その対岸部に県企業庁が「中部臨空都市」と銘打って埋立造成した前島は企業立地が進まず、ペンペン草が生い茂る広大な更地が広がっています。
県企業庁は、名鉄りんくう常滑駅南側の中央ゾーンと前島中央部の幹線道路沿いの生活文化ゾーンを分譲中ですが、同駅前にホテル1棟が建ったのみです。同駅は空港開港後1年経っても、今だに駅員のいない無人駅のままです。
大企業支援
県は「財政が厳しい」といいながら財界の要求にこたえ、大企業支援の補助金や新たな広域大型開発をすすめようとしています。
06年度予算では豊田自動織機や富士重工など大企業に「高度先端産業立地促進補助金」として11億7253万円が出されています。米航空機会社ボーイングの新型旅客機B787の主翼を製造する三菱重工へは4年間にわたり10億円の補助金を出します。
「ポスト万博・空港」として、中部国際空港に2本目の滑走路を建設する計画や伊勢湾口道路など高規格道路計画の加速、利水、治水のどの面からも必要のない設楽ダム計画など新たな浪費型大型開発をすすめようとしています。
また外資系企業を誘致する「グレーター・ナゴヤ・イニシアチブ(GNI)」や「国際交流大都市圏構想」など大企業優先の街づくりを計画しています。
福祉切り捨て
愛知の神田県政は、国の悪政に追随し福祉を切り下げ、格差拡大に拍車をかける方向を強めています。
日本共産党議員不在のオール与党県議会にささえられ様々な福祉施策の切り捨てが行われています。05年度には80歳以上の高齢者に毎年支給してきた敬老金を88歳、100歳の節目支給に改悪し、さらに88歳の敬老祝金の支給を廃止しました。
私立高校生授業料補助の所得制限強化、県立大学の授業料値上げなどもおこなわれました。
親のいない子の養育者に支給される遺児手当を支給開始5年で打ち切る改悪をしました。06度の遺児手当予算は7億6864万円の大幅減です。介護保険改悪や障害者「自立支援法」による低所得層の負担増を軽減する県独自の支援措置を拒否しています。
「財源がきびしい」というなら、不要不急の大型公共事業の抜本的見直しによる事業費節減や、法人事業税の税率引き下げで減税の恩恵を受けている大企業への超過課税で新たな財源確保をはかるべきです。この方向こそ「格差縮小」に役立ちます。
日本共産党や社会保障・福祉の拡充を求める諸団体は、愛知県にたいし介護保険の低所得者の負担軽減措置や精神障害者の医療費無料化、乳幼児医療費無料化の対象拡大、妊婦健診の無料回数増を求める運動を強めています。