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【06.05.21】ラグーナ蒲郡増資問題 あぶないリゾート第3セクター トヨタが迫る血税投入 

5月21日「愛知民報」

 蒲郡市内で複合型海洋リゾート施設「ラグーナ蒲郡」を経営している第3セクター「蒲郡海洋開発株式会社」(蒲開)への愛知県と蒲郡市の出資金増額と県・市有地提供が問題になっています。減損会計方式の適用による債務超過の穴埋めのための増資が強調されますが、直接の理由として、今年12月に返済期限がくるトヨタからの融資の返済金確保のための血税投入が浮かび上がってきました。

「トヨタラグーナ」

 県と蒲郡市は12月のトヨタへの返済額、その後の返済計画、減損会計適用後の事業資金計画を公表する責任があります。

 蒲郡海洋開発株式会社は1991年11月、愛知県、蒲郡市、トヨタ自動車らの官民共同出資でつくられた第3セクターです。ナゴヤドーム25個分にあたる120ヘクタールの埋立地を造成。ここに建設したテーマパーク、ショッピング施設、レストラン、マリーナを運営し、マンションなどの用地を分譲するレジャー・不動産業です。

 ラグーナ蒲郡は、別名「トヨタ・ラグーナ」。トヨタは、公的資金を使った3セクを利用し、リゾートマンションの販売やマリン事業を展開しています。

 蒲開の会長は神田知事ですが、副会長はトヨタ自動車社長の渡辺捷昭氏、蒲開社長の近藤昌嗣氏はマンション販売の豊田通商元副社長、取締役にはトヨタ傘下のヤマハ発動機国内マリン事業部長が入っています。

 今年4月、ラグーナに開校した中高一貫の全寮制男子校・海陽学園の設立代表者は豊田章一郎トヨタ自動車名誉会長です。

    蒲郡海洋開発株式会社の持株

 株主名 持株数  出資比率(%) 
愛知県   520   26.00
蒲郡市   500    25.00
トヨタ自動車株式会社   316   15.80
株式会社大林組   100   5.00
株式会社コクド   100   5.00
株式会社デンソー   100   5.00
豊田通商株式会社   100   5.00
株式会社UFJ銀行   100   5.00
東海旅客鉄道株式会社    64   3.20
蒲郡信用金庫    60   3.00
ヤマハ発動機株式会社    40   2.00
 合 計 2,000    100.00

(2005年3月31日現在)

最大の債権者

 ラグーナ蒲郡はバブル経済が崩壊しリゾートブームが去りつつあった時期にはじまった事業です。蒲開に事業資金を融資してきたUFJ銀行など銀行団が02年3月に債権の一部を放棄し、一部をトヨタに売却して事業から撤退しました。このとき愛知県の出資金のうち約13億円、蒲郡市の同じく約11億円が累積損失の穴埋めに消えました。

 トヨタは銀行団の債権の一部を買い取るとともに、蒲開に事業資金を貸し付けました。現在、約351億円を融資しています。トヨタは最大の債権者でもあります。

債務超過28億円

 トヨタの全面支援にもかかわらず、蒲開の経営はきびしいと見られています。開業3年目の05年度は海陽学園への用地売却益のおかげで約5800万円の赤字にとどまりましたが、その前は毎年数十億円の経常損失が出ています。05年度3月期末の債務超過は約28億円になっています。

 独立監査人が05年5月同社に提出した監査報告書は「会社は債務超過の状況にあり、継続企業の前提に関する重要な疑義が存在している」と警告しています。

 当初48億円あった蒲開の資本金は銀行団の融資撤退のさいの損失補てんに充てられ、現在1億円に減っています。

 さらに、固定資産の価値低下分を損失として処理する減損会計の適用で06年度3月期末の債務超過は195億円となる見通しです。

    蒲郡海洋開発株式会社の経常損失(単位千円)

 区分 2001年度  2002年度  2003年度  2004年度 
 売上高   5,841,158  5,917,383  5,158,016 9,335,421
 経常損失 △19,009,782 △2,486,216  △3,209,504  △58,830 

蒲郡海洋開発株式会社の計算書類より作成。
04年度の「売上増加の主たる要因は、分譲用地の販売による増加」(同書類)。

自治体融資 トヨタ融資の返済に

 増資問題が論議された蒲郡市議会で、市側は「減損会計で結果的に大幅な債務超過になっても今まで通りの経営は可能」と答えています。では、なぜ増資なのか。

 市側は「今、一番問題となっておりますのは、本年12月に返済期限となっておりますトヨタからの約360億円の借り入れであります」「トヨタ自動車の財政支援が続くかどうか、これだけであります。続かないときにはラグーナはなくなる」と答弁しています。

 出資自治体にたいし増資という形で、貸付金返済の原資提供を迫るトヨタ。新聞報道によれば、今年1月26日、トヨタ自動車副社長が神田知事に直接会い、県の増資を求めました。

 結局、愛知県は現金10億円余を出資し、ラグーナの敷地内にある県有地(6・8ヘクタール)を全て提供する方針を固めました。蒲郡市も10億円を増資し、市有地(5・5ヘクタール)を譲渡する方針です。金額にすると、県は約43億円、蒲郡市は42億円という巨額負担になると見られます。

 県と蒲郡市は12月のトヨタへの返済額、その後の返済計画、減損会計適用後の事業資金計画を公表する責任があります。

公共性があるのか 問われる自治体参加

 愛知県は万博・空港への集中投資で史上空前の県債残高をかかえ、県民福祉を削る有様です。蒲郡市の年間予算規模は250億円。これにたいし、トヨタは年間純利益1兆円超。そのもとでの税金投入と公有財産提供に県民から疑問が上がり、トヨタに地域への利益還元を求める声が強まっています。

 日本共産党愛知県委員会は5月8日、神田知事にたいし血税投入の方針を撤回するよう申し入れました。

 シーガイア、ハウステンボスなどレジャー・不動産・開発業の第3セクターの倒産が増えています。ラグーナ蒲郡では、地方自治体や第3セクターでなければできない公有水面の埋立事業は終わっています。リゾート・不動産業に地方自治体が出資すべき公共性があるのか、問われています。自治体の撤退を含め第3セクターのあり方の抜本的見直しが求められています。