4月9日「愛知民報」
愛知県と小牧市は、桃花台ニュータウンと名鉄小牧駅を結ぶ新交通システム「桃花台線」(ピーチライナー)を、開業16年目にして、2006年9月を目途に廃止することを決めました。ニュータウン住民の思いを聞き、ゆきづまる開発政治の責任を検証します。
過大な予測
同線を運営する第三セクター「桃花台新交通株式会社」に出資する愛知県の神田真秋知事(同社社長)と小牧市の中野直輝市長(同社副社長)は3月28日、「自立的経営の展望が見込めないため、これ以上の公的支援は行えない」と存続断念を正式に発表しました。
日本共産党は愛知県議会や小牧市議会で、桃花台線の需要予測の過大さを追及し、利用者の利便性向上を求めてきました。知事は記者会見で「一度も黒字化せず見込み違い」だったと需要予測の誤りを認めました。しかし、経営責任については「路線の廃止を決断したことが一つの責任の果たし方」と開き直りました。
県が立ち上げた「桃花台線のあり方検討会」(委員長=竹内伝史岐阜大教授、交通政策)は昨年3月「再生・存続の可能性を探る」よう県に求める答申を出しました。
今年1月の住民説明会には延べ500人を超える住民が集まり、分譲価格に桃花台線の建設費用が含まれており、同線があるからこその入居だ、公共交通として軌道を残せなど存続を求める意見が多数出されました。しかし、県は「存続は困難」という結論をだしました。
ラグーナ蒲郡(レジャー施設)は巨額支援 ピーチライナー(公共交通)は支援打ち切り 住民怒る
住民に犠牲
小牧駅から桃花台線に乗り込んだ60代後半の主婦は「買い物や病院通いに、よく利用しています。廃止は残念」、車中の10代の男性は「なくなったら不便。できればなくなってほしくない。父親は『絶対反対』といっている」、40代の主婦は「すごく残念です。春日井か高蔵寺まで繋がっていたら、もっと利用価値が上がったのではないでしょうか」、岩倉市からニュータウン内の小学校までバスケットの練習に通っているという中学生たちは口々に「時間がきちんとしているから安心して乗れる。バスは本数少ない。時間も遅れたりする。この電車がなくなると本当に困る。カードまで買って利用しているのに」、ニュータウンから名古屋市内まで小牧経由で通勤している50代の男性は「困ります。廃止されたら自動車利用が増えるのではないか。軌道を壊さずに、何か新しいシステムにできないものだろうか」と話します。
廃止決定を受け、できれば存続を願う多くの住民は「赤字は確かだが、議会も住民も検討期間の1年延期と住民合意を要望してきた。検討が不十分のままの廃止決定は無責任だ」と感じています。
城山5区区長の木下博さんは「今までの説明会はなんだったのか。赤字だから廃線でいいのか。入居者が負担した90億円はどうしてくれるのか。知事は、レジャー施設のラグーナ蒲郡の増資には30億円以上を出しながら、住民の足という公共性の高い桃花台線に年2億5000万円を支出することは県民の理解が得られないという。納得できない」と住民の思いを代弁します。
ゆきづまる開発政治
名古屋市のベッドタウンとして県が推進した桃花台ニュータウン開発の目玉は新交通システム「ピーチライナー」の導入でした。同線の建設総事業費は313億円。ニュータウン住民は、分譲住宅価格や賃貸アパート家賃に上乗せするかたちで90億8000万円もの建設資金を負担してきました。
しかし、計画通りに入居人口は増えず、開業6年目で単年度黒字、19年目には累積黒字を実現する計画は、完全に破たんしました。
愛知万博にあわせて開業したリニモ(東部丘陵線)も利用客が当初の想定を大幅に下回っています。
現実離れした過大な需要予測で開発を強行し、破綻すると住民に犠牲をおしつけるという、オール与党政治の開発至上主義とその結果に対する無責任さが問われています。