1月15日「愛知民報」
昨年12月24日に閣議決定された2006年度政府予算案は今月20日から開かれる通常国会で審議されます。この新年度予算案は、定率減税廃止や医療制度改悪など、国民に新たな負担と犠牲をおしつける一方で、83兆円もの余剰金を抱える大企業への法人減税を温存しています。道路特定財源や軍事費などのムダを温存し、家計への負担増と地方自治体への大幅な予算削減を押し付け、「改革」とは名ばかりの国民に背を向けた予算案です。とくに、愛知県関係についてはムダな大型開発を促進する予算が目白押しとなっています。愛知県関連予算のいくつかをみてみました。
徳山ダム導水路に調査費
徳山ダム(岐阜県揖斐川町)関連では、管理設備工事や国道付替え工事費として249億円余、徳山ダムの水を愛知県が利用するための導水路の実施計画調査費6億2千万円が計上されました。
徳山ダムは高度経済成長時代の高い水需要の伸びを前提に計画されたダムです。高度経済成長時代が終っても見直しをしませんでした。長良川河口堰の建設が始まった1983年頃から木曽川水系の「水余り」が顕在化しています。
徳山ダムの水を愛知県犬山市まで引く導水路は延長48キロ、総工事費が700億円~900億円が予定されています。水需要がない導水路はムダを重ねるだけです。
設楽ダム建設へ調査費
設楽ダムの調査費として18億5千万円が盛り込まれました。設楽ダムは豊橋市など東三河地方の水道用水、農業用水の確保と洪水調整などを目的とする総貯水量1億トンのコンクリートダムで事業費は約2千億円が予定されています。
現在の東三河地方の水需要は横ばいで2002年度の水道用水の需要実績は国の豊川水系水資源開発基本計画の60%にとどまっています。
設楽ダムが完成してカバーする流域面積は豊川水系全体の8.56%に過ぎません。洪水調整の有効性にも疑問があります。
海洋環境専門家の西條八束名古屋大学名誉教授は、設楽ダムによる大量取水のため三河湾に流入する真水が減り湾の海水交換機能が低下し、三河湾の水質汚濁が進むおそれがあると警告しています。
ダム建設予定地は県内でもっとも自然が豊かな地域です。山地は絶滅危惧種のクマタカやオオタカ、豊川は国指定の天然記念物のネコギギなど希少生物の生息地であり、生態系への破壊的影響をもたらします。
地元住民からは「使わない水のため自然を破壊し税金を使うのは問題」と建設中止を含め再検討すべきの声があがっています。
バース整備に予算
「国際競争力を高めるため」にと名古屋港など全国の6つの中枢港湾整備のために381億円の整備費が計上されました。
この予算は名古屋港飛島ふ頭(飛島村)に昨年に完成した第一バース(岸壁)の東側に建設が始まった第二大水深バース(岸壁)の整備に使われます。
第二大水深バースはトヨタ飛島センターの前に建設。水深16メートルで世界最大級の6万トン級のコンテナ船が接岸でき、事業費は350億円を予定。2008年の完成をめざしています。
24時間稼動の荷物預りスペース「共同デポ」を名古屋港に整備する予算も計上されました。
第2東名、環2などに多額の予算
第2東名高速道路は昨年の愛知万博開催に合わせて伊勢湾岸道路となる豊田から四日市まで完成しました。
今回の予算では豊田東ジャンクションから静岡県境までの53キロの建設費用が計上されました。
また名古屋環状2号線の名古屋南ジャンクションから高針ジャンクションまでの13キロの工事費も計上されました。
2006年度予算の概要(財務省原案)
【一般会計】 | 2006年度 | 2005年度 |
一般会計総額 | 79兆6,880億円 | 82兆1,829億円 |
(▲ 3.0) | ||
【歳入】 | ||
税収 | 45兆8,780億円 | 44兆0,070億円 |
( 4.3) | ||
税外収入 | 3兆8,350億円 | 3兆7,859億円 |
( 1.3) | ||
国債発行 | 29兆9,730億円 | 34兆3,900億円 |
(▲12.8) | ||
【歳出】 | ||
一般歳出 | 46兆3,660億円 | 47兆2,829億円 |
(▲ 1.9) | ||
国債費 | 18兆7,616億円 | 18兆4,422億円 |
( 1.7) | ||
地方交付税 交付金等 |
14兆5,584億円 | 16兆0,889億円 |
(▲ 9.5) | 3,689億円 | |
NTT事業 償還時補助 |
- | |
( - ) | ||
【財政投融資計画】 | 15兆0,048億円 | 17兆1,518億円 |
(▲12.5) |
(注)カッコ内は05年度当初予算比伸び率%、▲は減、-は比較できず。
愛知県・名古屋市関連事業の予算
事業名 | 内容 | 予算額 |
【愛知県】 | ||
木曽川水系連絡導水路 | 国直轄事業に。実施計画調査費 | 6億2000万円 |
設楽ダム | 環境調査費など | 18億5000万円 |
第2東名高速 | 豊田東JCT-静岡県境間53キロ | 全国で472億円 |
四管海上保安本部航空基地 | 伊勢基地から中部国際空港島に移転 | 2億5000万円 |
名古屋入管移転 | 土地購入費の一部 | 13億7000万円 |
名古屋大 法学研究科 |
アジアでの法整備支援事業 | 5400万円 |
【名古屋市】 | ||
名古屋環状2号線 | 名古屋南JCT-高針JCT間13キロ | 全国で1968億円 |
地下鉄桜通線 | 野並-徳重間の整備 | |
名古屋港 | 第2大水深バースの整備など | 全国で381億円 |