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【05.11.27】前島に暗雲 見えてこない「臨空都市」

11月27日「愛知民報」

 愛知万博との相乗効果で予想以上の開港ブームにわいた中部国際空港。その対岸部に、愛知県企業庁が「中部臨空都市」と銘打って埋立造成した前島は、企業進出がすすまず、ペンペン草が繁る広大な更地が広がっています。「都市」の姿は見えてきません。

土地売却ゼロ

 県企業庁は、りんくう常滑駅南側の中央ゾーンと前島中央部の幹線道路沿いの生活文化ゾーンを分譲中です。しかし、いずれも売却件数はゼロ。
 同駅前ではホテルとフィットネスクラブが入るビルが建設工事中ですが、土地は賃貸。生活文化ゾーンでは賃貸契約すら一件もありません。
 企業庁はこの事業の収支計画をつくったとき、前島の地価を、企業を引きつけようと常滑市街地の地価より低めに設定しました。しかしその後、市街地の地価は下がり続けています。愛知県の05年地価調査によると市街地の一等地の価格は1平方メートル当たり13万2千円。これにたいし前島の中央ゾーンの最高地価は14万5500円。価格差は逆転。前島は市場競争力を失いつつあります。

需要の裏付け欠く

 りんくう常滑駅はいまだに駅員のいない無人駅。満席のミュースカイが人気のない同駅を走り抜けて行きます。県企業庁は、りんくう常滑駅北側の約16ヘクタールを「早期具体化施設用地」に設定し、ここへの大型集客施設の誘致に躍起です。企業庁は前島に誘致する大型施設の例として、ショッピングセンター、シネマコンプレックス、海鮮市場などの商業娯楽複合施設をあげています。
 開港しても地元常滑の人口の伸びは小幅です。企業庁は前島の埋立認可をとるとき、05年の常滑市人口を6万6千人と推定し、大型商業施設の用地面積を計算しました。しかし人口は5万人にとどまり、予測は外れました。
 常滑市内陸部の多屋地区には、07年9月に大型商業施設カインズモールの開店が予定され、内陸部の集客力が強まる見通しです。
 企業庁は「足元商圏」に頼れないと見て、名古屋市、岐阜市、四日市市、岡崎市を含む人口最大640万人の広域商圏からの集客を期待しています。
 各地に大型集客施設が乱立するなか、企業庁は「立地創造型開発」の名で、需要の裏付けのない開発に走っています。

空港インパクトの検証を

 常滑市は、内陸部の6カ所で宅地造成をすすめ、乱開発気味です。さらに、臨海部で前島の南方に新たな埋立地の造成を検討しています。期待通りに人口が伸びないのは「『空港インパクト』を受け止める受け皿の整備が遅れたからだ」(市幹部)と新たな開発に向かう同市に、焦りと不安を感じます。
 中部国際空港の開港ブームが一段落しつつある今日、行政は、空港が地域にどの分野で、どのような影響を及ぼすのかを検証し、それを住民生活向上につなげる方策を住民参加で具体的に検討する必要があるでしょう。