HOME > 資料集 > 活動と主張(バックナンバー) >

【03.03.09】愛知県の2003年度予算案−“元気”どころか借金漬け「開発会社」路線つきすすむ

3月9日「愛知民報」

 神田真秋知事は2月25日に開会した県議会に2003年度県当初予算案を提案しました。全国の都道府県のほとんどが減額予算を組まざるをえなくなっているもとで、愛知県は4年連続の前年度比増額予算となることから、神田知事は「積極予算」と胸を張りますが、県民のくらしや福祉を優先して増額予算となったわけではありません。神田知事は「安心」「元気」をキーワードに予算編成をおこなったとのべました。しかし、そのうたい文句とは裏腹に将来に向けて不安が増し、県民は「元気」になれない予算といえます。

 新年度予算案には(1)万博・空港を中心とする大型公共事業にメスを入れられないため依然として公共事業が大きな規模を占めている(2)県民の世論と運動、県議団のたたかいの成果――という両面があります。

■利子だけで1日2億3千万円も

 歳入の中心をなす県税収入は2年連続の減となることから借金への依存度がますます強まり、新年度の県債は5347億円と過去最高です。

 これにより県債残高は03年度末見込みで一般会計だけで3兆5790億円(県民1人あたり51万円)、特別会計3002億円、企業会計3954億円をふくめ3会計合計で4兆2746億円(県民1人あたり61万円)となります。

 一方で大型開発の継続、一方で不況と大企業減税による税の空洞化というもとで、借金に頼る県政運営となっているため、借金の返済は年を追うごとに県政運営の首をしめていくことになります。

 新年度の公債費(県債の元利償還+借換債)は3708億円。年間の返済額は利子830億円、元金1392億円にのぼります。利子だけでも毎日2億2739万円、元利を合わせると、毎日6億円876万円が消えていくことになります。

■補助金のカットさらなる削減も

 神田知事は4年間で2995億円の「行革」による削減をおこなってきました。今回はさらなる削減をおこないます。民間社会福祉施設運営費補助金の制度改訂、各種補助金カットの継続など県民のくらしや福祉にはがまんを強いる内容となっています。

 とりわけ障害者福祉施設への補助金として大きな役割を果たしてきた「民間社会福祉施設運営費補助金」は神田行革のもと、人件費部分の15%カットが続き、福祉施設は職員の賃金カットや苦しい運営を強いられてきました。

 新年度からは、支援費制度への移行を口実に削減となる施設も生まれます。愛知県にはこの補助金をうけていた社会福祉施設が150あり、そのうち106の施設が支援費制度に移行します。県は「激変緩和措置を講じた(前年度比95%は維持)」といいますが、連続の補助金カットに続く新たなカットは福祉施設の運営に大きな影響を及ぼすことはまちがいありません。

 障害児保育対策事業費補助金は、整備費部分は残るものの人件費部分が廃止になります。新年度から国が制度を廃止して、一般財源化することから、県の制度も合わせて廃止するというのです。県は「市町村に対しては、地方交付税の特別保育地域活動事業への上積みとして一般財源化され、対応される」と説明しますが、国と県の補助が一気に廃止されることから事業の継続は市町村まかせとなってしまいます。

 新たな「行革」は事務事業の廃止117件(98億円)、尾張看護専門学校の廃止、佐久島青少年キャンプセンターの廃止など公の施設の見直し(1億円)、県関係団体の抜本的見直し(14億円)、職員の削減など定員管理(19億円)、財産の売却など自主財源の確保(35億円)、給与カット(6億円)、旅費制度見直し(5億円)など、総額178億円となっています。

 補助金カットの割合が若干軽減(1歳児保育実施費とへき地保育など15%カットが10%カットに改善)されるものもありますが、基本的にはこれまでのカットは継続です。

■福祉バス廃止に障害者らが抗議

 新年度から福祉バス「ふれあい号」を廃止します。1978年に松坂屋、丸栄、オリエンタル中村、名鉄百貨店、ユニーからの寄付1千万円を原資に購入し、81年に県予算1700万円で更新し、現在にいたっている、車イスで乗り込めるリフト付きバスです。

 02年度の予算額は53万4千円。障害者団体、福祉団体が無料で研修旅行などに利用してきました。この廃止にたいしては福祉バスを利用してきた障害者団体が抗議をおこない、緊急の請願も提出しています。

 わずかな予算ですむ福祉バスを廃止してしまう一方、県は燃料電池車を公用車として導入。トヨタ自動車から月126万円(年額1512万円)でリースしますが、燃料の水素ガス供給は東海市まで補給に行くことになります(燃料代年額1540万円)。「トヨタの実験台になるのか。福祉バスをトヨタから寄付してもらうべき」との声があがっています。

 神田知事になって以来、毎年減額してきた国民健康保険事業費補助金は今年度も1割が減額され、これにより5年前の水準(98年度比)でみるとついに34%にまで落ち込んでしまいました。市町村の国保料(税)会計に対する補助の6割以上がカットされたことによって、国民健康保険料の値上げにいっそうの拍車をかけるものとなっています。

■行政は疲弊、つけは県民に

 「元気も大事だが、道路で本当に元気になれるのか」という県民の声があります。知事の「元気」スローガンの中心は、万博、新空港と関連の道路を中心とした大型開発です。

 公共事業(投資的経費)は万博、空港がピークを過ぎたことから前年度比98・5%ですが、1昨年度比では108%と引き続き大規模のままです。

 愛知万博関連予算は総額466億円で、前年比89・9%。前年比で減ったのはインフラ整備部分である関連道路事業がピークを過ぎ、大幅に減って59・8%となったことによるものです。

 それ以外では愛環鉄道株式会社費120%、東部丘陵線(高速交通株式会社費)284・8%、博覧会協会補助金の220・8%をはじめとする会場整備と出展関連は195%と大幅増となっており、引き続き他の事業にはない破格の特別扱いです。

 中部国際空港関連予算は総額539億円で前年比85・7%。前年比で減ったのは開発用地埋め立てがほぼ完了した企業庁部分が72・5%となったことによるもので、それを除く空港本体と関連道路は106・5%です。

 県は、万博、空港をふまえた将来の大規模プロジェクト・大型開発推進のプラン作りにとりかかります。国際交流大都市圏構想策定1300万円、総合交通システムモデル圏域ビジョン策定費800万円、構造改革特区推進費880万円などの予算をつけました。

 県の役割を否定し、道州制導入を検討する「分権時代における県のありかた検討費」201万円も初めて予算化しました。

■市町村合併の押しつけ強化

 なかなかすすまない市町村合併も、あらたな段階で上からのおしつけをすすめようとしています。田原・赤羽根合併を想定した合併特例交付金は1億円。合併促進室を設置し、職員を派遣して市町村を「支援」するものになっています。

■県民と日本共産党の運動で後退許さず、多くの前進も

 新規事業のなかには県民が求め、日本共産党県議団が要望して実現したものも少なくありません。知事選挙・いっせい地方選挙に向けたたたかいが実ったといえます。

 地震防災対策には総額913億円をつけました。防災局を新年度から「部」レベルで扱います。民間木造住宅耐震改修費補助は昨年6月県議会で県議団が求めたものです。81年以前に建設された木造住宅でかつ耐震診断の結果、危険とされた住宅にたいし、県30万円、市町村30万円を補助します。「個人資産への税金投入は困難」としていた県の姿勢からは一歩前進です。

 しかし、市町村を事業主体とし、総額でも60万円だけ。200棟の予算(名古屋市内100棟、それ以外で100棟)でしかないため、81年以前に建設された木造住宅76万棟(うち名古屋市内22万棟)の全体を改修するのには3800年もかかってしまいます。

 昨年12月県議会で日本共産党県議団が求めた自閉症発達障害支援センターを新設します。ホームレス自立支援にも初めて予算がつきました。名古屋市では実施されていたものの、県としては新規事業として相談活動などを開始します。これも県議団が一貫して求めてきたものです。

 福祉医療(県単独部分で209億円)へは、新たな所得制限や一部負担金など県民負担は増やしませんでした。党県議団が求め、さらに12月県議会で約束させたものです。児童虐待対策のための児童福祉司は昨年に続き2年連続の増員(56人→64人)となりました。

 緊急地域雇用創出特別基金事業は新年度分55億円のところを10億円を前倒しし、65億円に増額しました。フリーター支援(仕事選択支援)も始まります。

 貸し渋り・貸しはがし対策では、損失補てん割合の引き上げ(2分の1→3分の2)と融資対象の拡大がすすみます。

 私学助成は、経常費補助部分で幼稚園が補助金カット以前の水準まで回復されました。総額も前進して471億円。県の補助金総額の半分をしめます。

 ぼろぼろといわれる県立高校校舎の改善は徐々にすすめます。プールの改修や温水シャワーも設置します。半田高等学校定時制跡地に「ひいらぎ養護学校」を新設、04年4月に開校します。

 満員のバスを改善してほしいと要望の強かった養護学校のスクールバスについては、3台(大府、岡崎、半田の各養護学校)増やします。スクールカウンセラーは101人から151人に増員します。

 産業廃棄物不法投棄対策については、監視体制を強化するとともに、緊急雇用対策としても延べ1754回の監視パトロールをおこないます。

▲ このページの先頭にもどる