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【02.12.08】名古屋の敬老パスは“市民の宝” 公明党の無責任さはっきり

2002年12月8日 「愛知民報」

 名古屋市の松原武久市政が市バス・地下鉄の敬老パスを見直す動きをつよめています。政令指定都市ではほとんどが70歳以上としていますが、名古屋市は65歳以上が対象。お年寄りが気楽に外出でき、健康にもよく、街の活性化にも役立っています。「現行のまま継続を」との声が高まっています。

健康によい 社会参加が気楽 まちの活性化にも

 敬老パスは、市民が65歳になる前に区役所から本人に通知があり、福祉部介護福祉課に出向くと交付してくれます。所得制限はありません。

 65歳以上の市民の数(毎年9月30日現在、辞退者やほかの無料制度利用者をのぞく)に利用率を掛け、さらに6カ月1乗車通勤定期券相当額の2倍(1年分)を掛けて負担金を算出します。その負担金額を一般会計(健康福祉局)から交通局に「敬老特別乗車券代」として繰り入れる仕組みです。

 利用率は健康福祉局と交通局が調べます。1998年の調査をもとに1日当たり乗車数のうち市バスでは26・9%、地下鉄では16・8%としています。02年度の敬老パス交付は32万1786人、予算額は約131億円。運輸収益の16・6%(01年度決算見込み)を占めます。とくに市バスは敬老パスで支えられています。

 市社会福祉審議会はことし7月、「今後の福祉のあり方検討分科会」を開き、「段階的に対象年齢を引き上げる」「負担能力のある人は応分の負担を」「両方の併用」などの意見が相次ぎました。「交通局への財政援助ととられかねない」として割引券制度、利用回数の制限、申請方式などに改める意見も出ました。

 市は8月17日、行財政改革計画と財政健全化計画の各素案を発表し、「敬老バスの見直し」を打ち出しました。名古屋市総務局の「行政評価」では、敬老パスは厳しい財政状況から、同審議会の検討結果をふまえ、「改善策」の検討が必要としています。

 市は来年度予算の編成方針を従来の要求積み上げ方式から市長のトップダウン方式に変えました。


公明党の無責任 導入時「60歳まで」と主張

「守る、守る」といいながら  与党として見直しへ

 敬老パスをめぐる公明党の無責任さが際立っています。

 敬老パス(敬老特別乗車券)は、神戸市では1972年11月、東京都では73年1月から70歳以上を対象に実施されました。名古屋市では73年の市長選で自民、公明などが推した現職を破り初当選した本山正雄市長が、同年7月の臨時定例会で「9月から70歳以上の市営交通料金を無料化したい」と提案しました。

 この時の本会議の代表質問で、公明党の石原千秋議員は、「60歳はいまただちにたいへんであるにせよ、せめて65歳以上の老人に限るよう、年齢基準を引き下げるべきではないか」と質問しました。

 これにたいし、本山市長は「私もやはり60歳はともかくとして、65歳ということが考えられると思います」と答弁しています。

 7月の臨時定例会では結局、「9月定例会で予算措置を講じ、65歳以上にもワクを広げよ」とした付帯決議を採択、全会一致で市長提案どおり可決されました。70歳以上に敬老パスが交付されたのは9月15日の「敬老の日」でした。

 その後、9月議会で65歳まで対象を引き下げる市長提案がこれまた全会一致で可決され、10月5日に65歳〜69歳の市民にも交付されました。

市長選のたび

 その4年後、77年4月の市長選で自民、公明、民社などは日比野暁美前市教育長をかつぎ、「65歳以上の老人に対し、市バス・地下鉄の無料化を実施」とした本山陣営のパンフレットを「共産派のウソつき宣伝」と攻撃しました。

 自民、公明、民社などは政策パッフレットで「無料パスは良識派議員の実績」として「共産派市長が68歳の線をガンとしてゆずらなかったものを、良識ある議員(自民・民社・公明・清友ク)が必死に説得して65歳までに拡大したものです」としていました。

 このパンフレットでは、「無料化年令を、近い将来さらに引き下げていくことをお約束します」とまで書いていました。

 「敬老パス選挙」といわれた85年の市長選では、「敬老パスを守れ」という革新陣営の攻勢に、自民、公明、民社、社会は4党市議団長連名で「敬老パスと老人医療無料制度の継続を約束します」とパンフレットで表明せざるをえないころまで追い込まれました。

見直しの底流

 敬老パスはすっかり市民に定着し、何度か見直し論が出ながら、お年寄りの熱い支持に「オール与党」の西尾武喜市政時代にも手をつけることができませんでした。雲行きがおかしくなったのは、東京都が所得制限を導入し、約7万8千人のお年寄りからパスを取り上げた前後からでした。

 79年2月には民社党の渡辺義信市議、80年3月と9月には自民党の近藤紀男、梅村行雄両議員があいついで市議会で見直しを主張。84年11月には、のち新南陽工場汚職事件で有罪となった公明党の泉義信市議が「申請主義とし、所得制限を設ける考えはないか」(一般会計等決算特別委員会)と質問しています。

 その後、97年には、新進党の渡辺義郎、自民党の坂崎巳代治両議員が年齢制限の導入を主張するなど、「オール与党」の間では敬老パス見直しの動きが続いてきました。

 しかし01年の市長選では、松原市長をかつぐ自民、公明などの陣営は、市民向けのビラで、65歳以上の敬老パスを交付しているのは「名古屋だけ」と誇り、さらに福祉を充実させると公約していました。

看板に偽り

 それから1年7カ月、オール与党市政は敬老パスの見直しに本腰を入れています。公明党は来年度予算編成にたいする10項目の予算要望でも「健康で明るく元気に生活し、寝たきりにならないような状態で生活できる期間、いわゆる健康寿命の延伸を図る」としています。しかし敬老パスを存続するとはひとことも言っていません。

 国でも地方でも与党の中に埋没した公明党。その実態を反映して来年のいっせい地方選挙用に張り出したポスターは「信頼と実績」という抽象的スローガンです。敬老パスをめぐる公明党の動きはその看板に「偽りあり」を証明しています。

「現行どおり継続を」と年金者組合200人が市長に要請

 年金者組合県本部(中川礼治委員長)は11月26日、名古屋市役所近くの公園で「敬老パスの存続を求める市民集会」を開きました。約200人が参加。「市民の宝、敬老パスを守ろう」と唱和しながらデモ行進しました。集会には日本共産党の市議5人も激励にかけつけました。

 年金者組合では、現行どおり継続するよう求めた松原武久市長あての署名約1万人分を集め、同日、市長室に届けました。

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