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【02.11.24】「世界のトヨタ」に払わせた! トヨタシンポ開催

2002年11月24日 「愛知民報」

“世界のトヨタ”で横行してきた「ただ働き残業」を改善させようという運動が広がりを見せています。過労死や自殺にもつながると指摘されている問題で、現場労働者や家族による告発、日本共産党の八田ひろ子参院議員らの追及で労働基準監督署が調査に入り、未払い残業代を払わせるという実績も生まれています。17日、名古屋市で愛労連などが開いた第20回トヨタシンポジウムでの報告から見ると――。

運動ひろがり 成果もジワリ

 トヨタの「ただ働き残業」については、トヨタ自動車と関連企業、豊田労働基準監督署が実行委員会を立ち上げ、11月28日に「ゆとり創造大会」を開く予定。企業も行政も悲痛な訴えを無視できないところまできています。

 日本共産党トヨタ党委員会では、「年間1800時間労働を」と工場門前や社宅でのビラ配りを5回、労組への申し入れもおこなってきました。

 昨年6月、名古屋北労働基準監督署がトヨタ営業部門の名古屋ビル(東区)に調査に入り、サービス残業が発覚。会社が83人に明らかになった半年分総額1千万円を支払ったことは大きな反響をよびました。内部告発が発端でした。

 その後、アイシン精機、豊田自動織機、豊田工機でも未払い残業代の支払いやタイムカードの復活など一部の職場で改善が相つぎました。

 リコール騒動によるリストラで人手不足になった三菱自動車でも、労働者有志が岡崎工場で残業調査を実施。その結果、夜勤でもないのに午後9時以降に退社した労働者が多数いました。三菱名古屋航空機でも連夜の調査をおこなったうえで、労基署に是正を申告。その結果、昨年12月の休日出勤の不払い分(95人に総額230万円)が支払われました。

限度こえる残業

 昨年9月、豊田労働基準監督署は大手企業アンケート調査を実施しました。家族からの訴えやサービス残業を自主申告する労働者が相次いだからです。回答した54社では、健康に影響が出る目安とされる月45時間を超える残業をしていた会社が86%に達していました。

 トヨタ労組はことし10月5日、定期大会でサービス残業根絶に向けた特別決議を採択。「しっかり仕事・きっちり申告」をよびかけています。

 しかし中国進出にともない、過密労働がさらに強化されているといいます。トヨタのある工場ではことし自殺者が4人。シンポジウムで、トヨタ労働者は「1分1秒を稼げと資本の執念はすさまじい」と厳しい職場の実態を報告しました。

国会で連続追及

 サービス残業問題を連続して国会で取り上げてきたのが八田議員。昨年12月、豊田工機の実態をあげ、改善を迫った結果、「月2、3時間しかつかなかった残業代が20時間つくようになった」などと話題になりました。

 さらにこの追及で、厚生労働省は1カ月45時間以上の残業は「黄色」、80時間以上は「赤色点滅」、100時間以上は「赤がつきっぱなし」と業務と脳や心臓疾患との因果関係が強まるとの見解を示しました。

 しかし、労働基準法36条による特別の労使協定で残業時間は青天井というのが実態。厚生労働省が示す上限の年間360時間を超えて働かせることができます。日本共産党愛知県国会議員団事務所の調べでは、トヨタ自動車は年間360時間をはるかに超える720時間(1カ月90時間)と協定しています。トヨタ関連のデンソーでは1080時間(同90時間)としています。

 ことし3月、八田議員はNTTなど大企業の特別協定を調査した資料を示しながら、異常な長時間残業を放置していると追及、「法律で上限を規制すべきだ」と迫りました。

 坂口力・厚生労働大臣(公明)は法規制の考えがないことを明らかにしました。

 八田議員は、家族からの訴えも「労働基準監督署は労働者の申告に準じて扱う」との政府見解もひきだしています。

 八田議員は、来年は解雇規制などのたたかいが国会でも正念場になるとして、「人間らしく働くルールを確立するためには、トヨタをその立場に立たせることが必要」と話しました。

“トヨタ県政”を告発  シンポジウムで発言相つぐ

 トヨタシンポジウムでは、トヨタの支配が県政、市政、地域生活にまで及んでいる実態が浮き彫りになりました。

 トヨタ関連企業の5次下請け業者は「4、5年前まではまだ仕事があったが、いまは別の下請け企業でアルバイトをしている。業者という意識が薄れてきた」と発言。月初めにさかのぼって下請け単価の切り下げを通知してくるトヨタの横暴を訴えました。

 豊田市の大村義則市議は、1千億円もかけた駅前再開発、400億円のトヨタスタジアムにつづき、今度は万博の観客を誘致する施設づくりとハード面に豊かな財政を投入する“逆立ち市政”で「市民は豊かさを実感していない」と“トヨタ市政”を告発。新日本婦人の会豊田支部からは、公立幼稚園、保育園の民営化計画を阻止する運動の報告がありました。

 林のぶとし県議は、万博を起爆剤に、「環境」に名を借りた道路づくりをすすめている県政を批判。中部国際空港の建設現場では「4週間も休みがない」というトラック労働者からの訴えが労組に寄せられているとの報告もありました。


時間外労働の年間限度時間(特別協定)
(日本共産党国会議員団愛知県事務所調べ)

企業名:年間限度時間

トヨタ自動車:720

デンソー:1080(1カ月90時間)

豊田自動織機:720

アイシン精機:900(1カ月90時間)

豊田工機:840

ダイハツ工業:650:

スズキ:540

NTT西日本(愛知県内):1000(1カ月150時間)

三菱造船(長崎):480

三菱電機(伊丹):600

富士通(長野・須坂):900

NKK(京浜):600(1日14時間)

新日鉄(八幡):600

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